ある高名な鳥類学者のエッセイに『舟で移動中、舳先に渡り鳥が!これが渡りに舟』とありました。
長距離を移動する渡り鳥。たまには「ただ乗り」も許してあげたいものです。
5月と10月の第2土曜日は「世界渡り鳥の日」です。国連が「国境に縛られることなく、何百、何千キロも移動する渡り鳥の保全について啓発する日」と定めたそうです。
環境省が渡り鳥の飛来状況 と 移動のデータ(鳥類標識調査 回収記録データ)を公開しています。殊に移動のデータはGoogle Earth Pro(無料)に表示され圧巻です。(対象の鳥を選んで『移動データの Google Earth での閲覧はこちら』をクリックするとデータ(kmlファイル)がダウンロードされ、kmlファイルをダブルクリック) 『飛来状況』では毎年秋~春(主に冬鳥)全国52ヵ所で調査したものです。
そもそも 渡渡り鳥とは
Wikipediaには『渡り鳥(わたりどり)とは、食糧、環境、繁殖などの事情に応じて定期的に長い距離を移動(渡り)する鳥のこと』とあります。
日本では、春に東南アジアなどの越冬地から渡来して繁殖し、秋に再び南方に渡去する鳥を夏鳥、シベリア・アラスカで繁殖し、10月ごろから渡来して、春に再びシベリアなどに渡去する鳥を冬鳥と呼びます。このほか繁殖も越冬もせず、春と秋の一時期だけ日本を通過(transit)する旅鳥もあります。
夏鳥の代表格はツバメ、アマサギ、オオルリ、キビタキ、クロツグミ、ハチクマ、サシバなど
冬鳥は、マガモ、オオハクチョウ、ツグミ、ジョウビタキ、ユリカモメ、マナヅル、オオワシなど
旅鳥はシギ・チドリ類
因みに、渡りをしない鳥を留鳥(スズメやメジロ、カラ類など。ヒヨドリは以前は渡り鳥でしたが、今は留鳥です)、夏は山地で冬は平地、または国内での移動といった、長距離ではないものの季節に応じて移動をする鳥を漂鳥と呼びます。ウグイスには留鳥と漂鳥の両方がいます。
夏鳥の目的は子育て・食べ物。ツバメやオオルリなどの昆虫を食べる鳥たちにとって日本の夏は繁殖にも最適。冬になると食べる虫も居なくなるので暖かい南の国へ渡っていくと言われています。
冬鳥の目的も食べ物ですが、水面で生活する水鳥や、地面でえさを探さがす小鳥たちが厳冬のシベリアから暖かい日本へ食べ物を求めて渡ってくるのだと考えられます。何故寒いシベリアに戻るのかは疑問ですが、北方では天敵が少なく食べ物の競争相手が少ないからと言われています。
渡りの距離を推定するには、「鳥類標識調査環境省と山階鳥類研究所で行っている:
一羽一羽の鳥を区別できる足環や首環などの「標識」を付けて放し、観察や再捕獲によって、その鳥の移動や年齢などを明らかにする調査
Bird Bandingと言う」や「人工衛星を利用した調査鳥類の背中に付けた送信機からの電波を人工衛星が受け、地上受信局に送信しその位置を明らかにするが利用されています。
山階鳥類研究所のホームページによると日本では、南極で足環をつけられたオオトウゾクカモメという海鳥が、12,800kmもの長距離を移動して、北海道の近海で発見された記録があるそうです(日本での最長)。また夏に北極で子育てし、冬には南極(北極が夏の時は南極は冬)まで移動いどうするキョクアジサシは9万6000㌔を移動したという記録があるそうです(因みにキョクアジサシは極アジサシ)。
- 渡り鳥は日の出からの時間とその時の太陽の位置で方角がわかると言われています(太陽コンパス)。夜は星座の位置で飛び、また地球の磁気を感じ取ることが出来、渡りの方角を決めることが出来るとも言われています。目的地に近づくと記憶を頼りに 川などを目印に飛ぶことも分かっています。
- 鳥の種類にもよるのかも知れないが、チドリなどは渡りの前に脂肪を溜め込み、渡りの直前には胃や腸などの消化器官を小さくし、脂肪を少しずつ使いながら飛ぶそうです。
- 長距離飛ぶ場合、半球睡眠といって、半分寝ねながら飛ぶことが出来る
マガモとツバメの移動
鳥類標識調査からマガモとツバメの渡りをダウンロードしました。全データはgoogle earth proで見るとおりですがデータ数が多すぎるので1995~2011年データを抜き出して地図上に表示しました。直線は放鳥地と回収地を結んだもので、距離により色分けしています。google earthと同様に線にマウスを乗せると情報が表示されます。
最長距離はマガモが3,281Km(放鳥地:埼玉県越谷市 回収地:ロシア連邦サハ共和国ペレドィ)
、ツバメは3,956Km(放鳥地:北海道亀田郡七飯町 回収地:フィリピン西ネグロス州)でした。
(直線距離なので実際の飛行ルートの距離ではありません)
春になるとあちこちに巣を作り子育てするツバメが3,000Km以上の遠くからやってきたと知ると感慨を覚えます。
鳥種毎の観察数の推移
冬鳥のため、各年は前年の10月~当年の9月としています。観察数の多いのはマガン・マガモ・オナガガモの順です。年によって変動はあるのですが、2022年は総じて2021年より増えています。鳥種にもよりますが、2018年から穏やな増加傾向があるように見えます。2020年のマガン・2017年のキンクロハジロ・2016年のヒシクイのように他の年と比べ突出して多いことがあります。何か渡りに原因があるのでしょうか。
推移グラフ(マガン~ヨシガモ)
2011年12月~2021年12月の月別平均観察数
鳥種を選ぶと【月・年別】【月・緯度範囲別(同緯度内の年平均)】のグラフが描かれます。冬鳥なのでほとんどが9月か10月から増えてきます。終りは1月か2月まで。年によってかなりバラツキがあるようです。面白いのはマガンは9月と3月にピークがあります。月をおう毎に緯度が変わるのかと思ったのですが、そういった傾向はありません。一度飛来したら日本国内での移動はあまりないのでしょうか。
月・年別の観察数
月・緯度別の観察数
あの鳥は何処で見れるか
地図上の●が全国52ヵ所の調査地です。マウスをのせると調査地名が、クリックすると環境省の詳細URLなどが表示されます。
対象の鳥を選んでください。地図の赤い●で見ることがで来ます。対象の鳥は環境省のURLで【観察出来る鳥】の項目に記載のある鳥です
おしまい